第69回カンヌ国際映画祭 監督賞受賞
必ず守る、娘だけは
カンヌ映画際3度目の受賞作品

エリザのために

2017.1.28〔土〕より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

カンヌ映画祭で3度受賞に輝くクリスティアン・ムンジウ監督、最新作!

イントロダクション

ルーマニアン・ニューウェーブ*をリードするクリスティアン・ムンジウは、監督と脚本を手掛けた2007年の長編第二作『4ヶ月、3週と2日』でチャウシェスク独裁政権末期1987年のルーマニアを舞台に、妊娠したルームメイトの違法な中絶を助けしようと駆け回る主人公の1日を描き、初めて第60回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選ばれ、その衝撃的で緊張感に満ちた映像で、ルーマニアに初の最高賞パルムドールをもたらした。世界中に名を知られることになり次の作品が期待されるなか、5年後、2012年・第65回カンヌ映画祭において、『汚れなき祈り』で、女優賞&脚本賞のW受賞を得る。2016年・第69回カンヌ映画祭において、卒業試験に娘を合格させるため、違法なコネとツテを使い奔走する親の姿を描いた『エリザのために』(監督・脚本・製作)で、見事、監督賞を受賞する。徹底したリアリズムと緻密な脚本、秩序ある構成は、ムンジウの映画を他とは一線を画す存在へと引き上げている。

*ルーマニアン・ニューウェーブ…ムンジウを初め、第63回ベルリン映画祭 金熊賞(最高賞)受賞『私の、息子』の カリン・ペーター・ネッツアー監督など、ルーマニアでは近年世界の映画祭で評価を受ける監督・作品が次々と輩出されている。

ストーリー

医師ロメオには、イギリス留学を控える娘エリザがいる。彼には愛人がおり、家庭は決してうまくいっているとは言えない。ある朝、ロメオは車で娘を学校へ送っていくが、校内に入る手前で降ろし、彼女は徒歩で登校することに。しかし白昼人通りもあるなかで、エリザは暴漢に襲われてしまう。大事には至らなかったが、娘の動揺は大きく、留学を決める翌日の卒業試験に影響を及ぼしそうだ。これまで優秀な成績を収めてきたエリザは、何もなければ合格点を取り、ケンブリッジ大学で奨学生になれるはずだった。ロメオは娘の留学をかなえるべく、警察署長、副市長、試験官とツテとコネを駆使し、ある条件と交換に試験に合格させてくれるよう奔走する。しかしそれは決して正しいとは言えない行動で、ついに検察官が彼の元へやってくる…。

コメント

(敬称略・順不動)

恐るべき演出力不気味なまでの人間凝視。
ハリウッドの監督は逆立ちしても出来ない秀作。
―― 山田洋次(映画監督)
強烈なメッセージが自戒と家族のあり方を浮き彫りにする。
誰も真似のできない映像と勇気に乾杯!
―― 奥田瑛二(俳優・映画監督)
目が離せなかった。
誰だってふとしたキッカケで倫理から外れて生きてしまう。
アドリアン・ティティエニ演じるこのお父さんのように。
この映画が素晴らしいのは、 倫理から外れる人物をことさら持ち上げることも糾弾することもしないことだろう。その繊細に揺れ動く感情の網目を通じて、見る者は自らの倫理感と向き合うことになるだろう。それはとても得難い貴重な時間であるはずだ。

―― 深田晃司(映画監督『淵に立つ』)
苦しい状況だからこそ人はの光を求め続ける。
あなたの心に明かりを灯す傑作
―― 茂木健一郎(脳科学者)
自分も国家試験などを受けてきたが、それが日本で良かったと切実に感じた。
―― おおたわ史絵(内科医・作家)




壮大な物語をわずか数日の出来事として、 それもたった2時間に凝縮した『エリザのために』は
ダルデンヌ兄弟のカメラの動きが生むエネルギー
と、
ミヒャエル・ハネケの歪んだミステリーを併せ持つ作品だ。
―― TIME OUT
秩序が崩壊した社会で、ある医者が娘の大学試験合格のために賄賂に手を染める様子を
ムンジウは美しく秩序ある構成で描き出す。
―― VARIETY
最高傑作『エリザのために』は、クリスティアン・ムンジウ監督がヨーロッパを代表する
最高の監督であることを証明している。
―― SCREEN INTERNATIONAL
キャスト
アドリアン・ティティエニ…ロメオ・アルデア役
1963年生まれ。ルーマニアの舞台・映画で活躍する俳優として有名。映画デビューは、1986年ベルリン国際映画祭でプレミア上映された“Pas în doi / Paso double”で、それ以来、今日に至るまで50本以上の映画に出演している。1992年にカンヌ国際映画祭でプレミア上映されたルチアン・ピンティリエ監督の“Balanța / The Oak”や、2005年にカンヌ国際映画祭に出品されたクリスティ・プイウ監督の 『ラザレスク氏の最期 <未>』、2013年ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受賞したカリン・ペーター・ネッツァー監督の『私の、息子』(子供の父親役)などにも出演している。
マリア・ドラグシ…エリザ役
1994年生まれ、ドイツ出身。ドイツのドレスデンにあるパルッカ大学でダンスを勉強中にミヒャエル・ハネケ監督の『白いリボン』に出演し、同作で聖職者の娘クララを演じた。『白いリボン』は2009年カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞し、2010年ドイツ映画賞では彼女に最優秀助演女優賞をもたらした。それ以降も様々な作品に出演し、2016年には3作品、クリスティアン・ムンジウ監督の『エリザのために』、Jakob Lass監督の“Tiger Girl”、バーバラ・アルバート監督の“Light”が公開予定。
ヴラド・イヴァノフ…警察署長役
1969年生れ、ルーマニア出身。ムンジウが監督・脚本を手がけた『4ヶ月、3週と2日』では堕胎医役で強烈な印象を残す。ベルリン映画祭金熊賞受賞のカリン・ペーター・ネッツアー監督『私の、息子』、コルネリュ・ポルンボユ監督の2009年カンヌ映画祭ある視点部門出品、審査員賞他受賞の“POLICE,ADJECTIVE”などにも出演しており、そのすばらしい演技力と存在感でルーマニア映画界で欠かせない存在となっている。またルーマニアに限らず国外からも注目され、『ジャン=クロード・ヴァン・ダム ザ・コマンダー <未>』、ラデュ・ミヘイレアニュ監督の『オーケストラ!』、レイチェル・ワイズ主演『トゥルース 闇の告発<未>』、ポン・ジュノ監督の『スノーピアサー』など、アメリカ、フランス、ドイツ、韓国などの作品にも数多く出演し国際的に活躍を続けている。
スタッフ
クリスティアン・ムンジウ…監督・脚本・製作
1968年生れ、ルーマニア、ヤシ出身。映画デビュー作“Occident”は2002年カンヌ国際映画祭の監督週間でプレミア上映され、ルーマニアでもヒットする。2作目の『4ヶ月、3週と2日』では、監督・脚本を手がけ、第60回カンヌ国際映画祭でのパルムドール受賞を皮切りに、様々な国際映画批評家協会賞を受賞した。そしてヨーロッパ映画賞では最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞している。2009年、彼は再び脚本・プロデューサー・共同監督を務めたオムニバス映画“Tales from the Golden Age”でカンヌ国際映画祭に戻ってくる。そして2012年、第65回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映された『汚れなき祈り』は女優賞・脚本賞のW受賞を果たした。彼は2013年カンヌ国際映画祭では審査員を務めた。5作目となる『エリザのために』が、2016年、第69回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、ムンジウ監督にとってカンヌ3度目の受賞作となる。
劇場情報
関 東
都道府県 劇場 公開日